本の読み聞かせは有効
前回は、親の収入に差がある場合、子どもの学力も就学前にすでに差がついている、という調査結果を紹介した。今回は、やはり差が現れたとされる育児方法の違いについて紹介する。
本の読み聞かせはテストの結果に影響するようだ。同じ収入グループの子同士では、毎日の読み聞かせをしてもらっている子といない子で発達年齢に2カ月ほどの差が出た。また定期的に図書館を訪れている子の場合は、2カ月半ほどの差が出た。だが一方で3歳の時点を比較すると、金持ち家庭グループの子の78%に対して、貧困家庭グループの子の45%しか毎日の読み聞かせをしてもらっていないことがわかった。
最も貧しいグループの子どもの3分の1以上が、GCSE(※)で一教科もC以上の成績をとれなかった親の元に生まれている。一方で、最も裕福なグループの子どもの5分の4以上は、両親のうち少なくともどちらかが学位以上の学歴を持っていた。
(※)GCSE・・・全国統一で行われる、イギリスの一般中等教育修了試験のこと。
政府への提言と政府の反応
中流家庭の子では10人に1人の割合なのに対し、最も貧しいグループの子どものうち3分の2程度が、産みの両親とは暮らしていなかった。今回の調査に資金を援助した慈善団体、サトン信託の会長、ピーター・ランプル卿は「貧しい家の出の子どもが、教室という場に足を踏み入れる前にすでにハンデを負っているという厳しい現実にさらされる一方で、貧困というものが幼児期の子どもの発達に与える悪影響は子育ての仕方によって克服することが可能だとわかったのだ。今回の発見は、ショッキングである一方で励みになるものだともいえるだろう」と語っている。
イギリスでは現在、3~4歳児を対象とした週12.5時間の子育て教育を、無料で受けられる制度がある。今年からその無料教育を週15時間へ増やす計画が政府で進行中だが、サトン信託はその計画を中止し、代わりに全体の15%にあたる最も不利な状況の家庭に週25時間の教育を提供することを要請している。また同信託は、より貧しい家庭に対する子育て指導の改善も求めている。
子ども省の担当大臣、デリス・モルガン氏は「近年は様々な試みが行われてきたのだが、サトン信託の提言にはそれらの結果の大半は反映されておらず残念だ。提言されたものの多くはこれまでにもすでに指摘されてきたこと。学校教育の開始時点で成績が低かった子が追いつき、追い越していく例も多く見られており、幼児期に現れる裕福な家庭の子と貧しい家庭の子との差はすでに縮まってきている」と語っている。
(編集部 小川優子)
Poor children a year behind in language skills