子どもを中心に10年以上長期支援
ソフトバンク社長の孫正義氏(53)は7月25日、同社で会見を開き、自ら会長・発起人として発足した
『公益財団法人 東日本大震災復興支援財団』の事業計画の概要を発表した。『子どもたちが夢と希望を育む環境を実現する』を念頭に置き、被災した子どもたちや支援活動を行う団体への継続的な助成、被災した子どもたちへの直接的な支援を行う。孫会長は「10年以上にわたって支援できるよう、寄付された基金は100%被災地の子どもたちを中心とした支援のみに使われる」と述べた。
孫正義氏は、日本を代表する実業家の一人で、ソフトバンクグループの創業者である。東日本大震災の義援金として震災が起きた翌月には、個人で100億円を寄付することを明らかにし、また2011年度以降、社長を引退するまで役員報酬を全額寄付するとも発表した。これとは別にソフトバンクグループとして10億円を寄付するとも発表するなど、被災者支援に大きく貢献している。
孫正義会長は「震災で片親、両親を亡くした孤児、遺児がいる。その皆さんには、特に義援金の支援以外にも必要な支援があるのではないか」と、精神的に追い込まれやすい子どもたちを救済すべく、個人で寄付した被災地向けの義援金・支援金100億円の寄付先のうち、40億円を財団設立費用にあてた。本来なら半年から1年以上かかるという許認可も、政府が未曽有の大震災ということを考慮し、短期間での許認可取得となった。
「ライフラインを提供する立場として、震災の時、もう少し電波がつながっていれば、一人でも助かった命があったのではと思うと、非常に申し訳ない。自分自身が悔しく、当事者としての罪の意識を持った」と複雑な胸中を明かし、「本来ならば、支援活動は黙って静かにやっていくものだと思う」と前置きした上で「一部誤解や批判を受けることがあったとしても、被災で苦しんでおられる方々のため、名乗りを上げ、少しでも支援の輪が広がることのほうが、今の日本にとって望ましいこと」と大々的にやる意義を語った。
発起人には王貞治ソフトバンク球団会長、ジャニーズの国民的人気グループ・SMAPも名を連ね、王氏は被災地を訪れた際「このようなことが実際にあるのかという惨状でした」と被害の大きさを目の当たりにしたという。今回の財団に発起人として加わることで「この財団の運動が一人でも多くの方にご支援いただけるよう、微力ながらスポーツを通して役立たせていただきます」とコメントした。
SMAPを代表して会見に参加した中居正広は、自身でも義援金寄付や極秘で被災地訪問、ジャニーズの復興支援プロジェクト『Marching J』を通し、長期的な支援を継続中だが「もっともっと、やらなければならない意識は日を増すごとに増えている」と神妙な面持ちで語った。震災からもうすぐ5ヵ月になろうとしている現在、「皆さんの意識が薄れてきているのでは」と危惧し「意識を持ち続けること、関心を示し続けることが大事。この財団をきっかけに、ぜひ皆さんにご協力していただけたら」と呼びかけていた。
今後の事業計画として、8月1日より総額1億6000万円の支援金を想定した『子どもたちサポート基金』をスタートさせる。NPO団体やボランティア団体などから要望を募り、内容などを考慮して支援金の分配を行う。また今夏より18歳未満の震災孤児を対象に、ソフトバンクだけでなく全携帯事業者の料金など総額1億6000万円分をサポートする。原発事故を受けた福島県の子どもらには、今夏より一時避難、子育て相談会、サマースクール、健康相談などを開催し、資金支援を行う。
愛する人たちを失った悲しみや住み慣れた町や家を失くすのは、分かりたいと思っても当事者でない限り本当の苦しみや悲しみを理解することはできない。しかし、少しでも、微力ながらでもその悲しみを癒すことはできるかもしれない。1人1人の力は小さい。でもその小さな力を合わせれば大きな力となり、支えになると思いたい。その想いを言葉にするのは簡単だ。誰に言われるでもなく、自ら進んで行動した、孫正義会長に賛同して、少しでも被災者の役に立ちたいものである。
(画像 被災から1週間後の三陸海岸(2011年3月18日、岩手県上閉伊郡))
ソフトバンク株式会社