魅力的過ぎる野党の育休政策案
オーストラリアの最大野党である自由党の党首、トニー・アボット氏は、6カ月の有給育児休暇政策に関する構想を承認したとされる件で、現時点では報道陣への明言を避けている。だが政策の有益性については言及しており、月末には正式に政策案について発表するとみられる。
アボット氏によると、6カ月の有給育児休暇政策は数週間以内に発表される見通しで、与党労働党が進める「ちっぽけな」18週間の育休構想(育休手当は最低賃金)に対する切り札となる模様。
同氏は労働党の政策について、「政策としての効果は疑わしいものだ。あんな条件では、働く女性の生活がギリギリになってしまう」とコメントしている。
大手報道機関フェアファックスは、アボット氏が乳母に保育従事者並みの給与および待遇を保証し、その費用を税金によってまかなう政策を検討していると報じている。
一方で金融業界およびビジネスに強みのあるCPAオーストラリアは、アボット氏の政策には費用面で限界があると見ているようだ。
冷ややかな反応・・・ 与党やACTUの見方は?
だが与党も労働組合協議会(ACTU)も、アボット氏に対しては批判的な姿勢を見せている。ACTUはワークチョイス政策(2006年に導入された労使協定改定法。総選挙では同法が国民の関心を集めて政権交代が行われるなど注目を浴びたが、その後様々な批判を呼び労働デモなどに発展、わずか三年後の2009年に終止符を打った)の時のようなインパクトあるこの政策に、女性はかえって警戒するだろう、とコメントしている。
ACTU会長、シャラン・ビューロウ氏は声明の中で、「アボット氏が働く女性を支援するなどという話は到底信用できない」と語る。「これまで何年も、女性に対する偏見で凝り固まった見方しかできなかった人ですから、選挙を前にして有権者を丸め込もうとしていると見るべきでしょう。(中略)アボット氏の本音は『家事やアイロンがけは女がやるもんだ』という最近の発言の中にちゃんと現れていますよ。」とばっさり。
ケビン・ラッド首相は、与党の構想は充分に検討を重ねられてきたもので、野党の政策案とはわけが違う、と語っている。
また性差別対策委員長、エリザベス・ブロデリック氏は、野党の案には老齢年金のことも視野に入れるべきであることと、企業に与える影響を考慮すべきであることに言及している。
「もし中小企業に増税の負担を背負わせるなら、企業は女性を雇用することを躊躇してしまうのでは、という意見も多く耳にします。」
グリーン党は、与党が野党に対抗して少なくとも26週の育休構想を出すべきだと主張している。
与党である労働党は、2011年より18週間の育児休暇手当を国の最低賃金である週あたり544豪ドル(約43,000円)を赤ちゃんの主な保育者に対して支払う案をすでに表明しており、年間約2億6千万豪ドル(約200億円)の支出が見込まれている。
(編集部 小川優子)
Abbott yet to reveal parental leave plan