自分よりも辛い我が子の苦しみ
愛する我が子が目の前で不治の病と戦っており、痛みに苦しみ、死がすぐそこまで迫ってきている。親として、これほど辛い瞬間はないだろう。そんな時、親はどう考えるのだろうか?
アメリカ・マサチューセッツ州のボストンにあるダナ・ファーバーがんセンターでは、子どもをがんで亡くした141組の夫婦に対し、一連の質問を行った結果をまとめた。その結果、19組の夫婦は医師に子どもを早く死なせてやるよう依頼することを本気で考え、13組は看護師に実際に相談していた。また、「もしも子どもが薬で抑えきれないほどの痛みを感じていたとしたら、安楽死を考えた」かどうかを問う質問では、34%の保護者が「考えた」と答えている。
今回の調査は、死期の迫った子どもを治療することの困難さに焦点を当てたものだ。子どもが痛みに苦しむ姿を見ることは、親にとっては耐え難い苦痛である。だがほとんどの場合、親はもう治らないという現実をなかなか受け入れられず、希望を捨てられない。医療関係者側にとって、より重篤な子の末期治療計画を親と話し合うことが困難を極めるゆえんでもある。
安楽死に一歩近づけるか
ダナ・ファーバーがんセンターは、子どもを亡くしてから1年以上10年未満が経過した親に対し、子どもの安楽死をどう考えるのかという調査を質問形式で行った。合わせて、「子どもが治る見込みのない末期がんになったとき」を想定し、二つの仮説のもとでどのような選択をするかを質問した。二つの仮説とは、「死の間際で痛みに苦しんでいる場合」と「目覚めることのない、死を待つだけの昏睡状態の場合」という仮説だ。
どちらの仮説のもとでも、死期を早めることを選択した親が多かった。その傾向は、子どもの苦痛の度合いが増すごとに多くなった。さらに、人種、宗教、経済状態などによっても結果に差が出た。白人や無宗教派の人は、子どもの死を選択する傾向が高かった。やはり信心深い親にとっては、子どもの死という選択には抵抗が強いようだ。
アメリカでは、安楽死はまだまだ否定的な意見が多く、何らかの形で肯定されているのはオレゴン州とワシントン州だけだ。その現状を考えても、今回の調査の結果がすぐに安楽死を認める動きにつながるとは考えにくい。だが子どもの痛みを少しでも緩和してやりたいという多くの親の願いを伝えることで、小児がんの末期治療のあり方に疑問を投げかけることはできるだろう。
(編集部 小川優子)
Study: Parents Weigh Hastening End for Dying Children