騒動は法改正も視野に入れた論議へ
アメリカのペンシルベニア州で先月末、学校から貸与されたノートパソコンに付属のカメラを利用して、学校にプライバシーを盗撮されたとして、生徒が学校を管理する学区を訴える騒動があった。
騒動は、連邦議会でアメリカの通信傍受法やウェブカメラについての論議が行われるという、予想外の展開を見せている。鍵になるのは「学校がとったとされる行為は通信傍受法に違反しているのかどうか」という点だ。
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現行の法律は時代遅れ?
現行の通信傍受法では、「口頭での、電信での、もしくは電子的な伝達手段により、本人の同意なく情報を収集すること(裁判所命令によるものを除く)」を禁じている。「口頭」はともかくとして、「電信」は電話などの機器を通して耳から入る情報を総合的に含むが、「電子的」に至ってはメールなどの手段しか含んでいないのが現状だ。
要するに、音声が入っていないビデオによる「伝達手段」は、通信傍受法の取り締まりの対象外となっているのだ。今回のケースではパソコンに付属のマイクは使用していないため、同法違反は適用できない。
ウェブカメラ、ワイヤレスTVカメラ、それに携帯電話でもビデオを撮ることができる今の時代、今の法律は完全に時代遅れになりつつある。連邦議会も州も、ビデオ撮影に関しては、盗撮行為への取り締まり以外の行為、つまり今回のような「濫用」を禁じる対策はほとんどとってこなかったのである。
法律の専門家による意見は
犯罪および薬物に関する上院司法委員会は三月末、ついにペンシルベニア州のフィラデルフィア地区連邦地方裁判所に足を運び、「ノートパソコンを利用したビデオによる監視」に関する公聴会を開いた。
ある弁護士は証言台で、これがビデオによる不正な監視ではなく、(パソコンに付属している)マイクによる盗聴やビデオチャットの傍受であれば間違いなく違法行為であるとして、現行の法律の矛盾を激しく非難した。
弁護士はウェブカメラの有益性を評価する一方で、ビデオによる不正な監視は人々にとって脅威と化している、として法律を一刻も早く改めることを求めている。
一方で、ある司法省の元検事は、法改正はくれぐれも慎重に行うように、と求めた。元検事はカジノの監視カメラに映る女性の胸元を拡大して職員が眺めていた容疑事例など、監視カメラの濫用例を数多く挙げながらも、カメラの監視機能が子ども達の安全を守っている一面も忘れてはならない、と指摘している。
赤ちゃんの部屋に取り付けるタイプのカメラなどがその一例だ。大人がそばにいないときにカメラを通して赤ちゃんの様子を監視することで、万が一の事故を未然に防ぐことができる。今回の訴訟例に従ってうかつな法改正を行うことで、こういった有益性に影響が出るなど、さらなる問題が浮上することを元検事は懸念している。
(編集部 小川優子)
高校が生徒のプライバシーを覗き見?全米で騒動に(2月27日)
http://www.ikuji-support.com/news_esxA4TzR8.htmlSchool laptop spy case prompts Wiretap Act rethink
http://arstechnica.com/tech-policy/news/2010/03/school-laptop-spy-case-prompts-wiretap-act-rethink.ars